超高齢化社会を迎える日本にとって、医療従事者不足は深刻な問題です。看護師についても、何万人ものレベルで足りない事が予測されています。しかし、それとは裏腹に現場の看護師さんの多くは、「退職」を考えながら働いています。
なかなか人手不足が解消されない現場と、政府が進めようとしている働き方改革の狭間で、より大変になっている看護師さんの現状をお届けします。
「結婚」や「出産」の裏に隠された本当の退職理由とは
公益社団法人日本看護協会の「2017年病院看護実態調査」によれば、2017年の正職員の離職率は10.9%。新人看護師の離職率は7.6%。他業種に比べて格段に多い、という訳ではありませんが、人手不足の解消にはなっていない状況が続いています。
退職理由としては
「出産・育児」「結婚」が上位に挙げられていますが、共働き家庭も増え、保育施設完備の医療機関も増えている事を考えると、単にこれだけの理由ではない、という事が分かりますよね。
やはり、人間関係や過酷な労働環境をなんとか頑張っていた方が、結婚や出産を『いいきっかけ』として退職している事が大半なのだと思います。職場環境の不満を口にするより、退職理由としても言いやすいですものね。
看護師の75%は退職を考えている、というデータからも、退職理由の奥に隠された本当の理由を読み解く必要が、病院側にはあると言えるでしょう。
看護師不足が続くとどうなる?
もう何年も前から看護師不足という言葉は聞いていますが、実際患者の立場で外来に少し行く程度では、あまり実感できないかもしれません。
一番看護師不足が如実に現れているのは、病棟なのかもしれません。
少し前のデータになりますが、2008年に厚生労働省が発表している資料には「病床あたりの看護師数が多いほど患者の安全性は高い」と明確に実証されています。
当然と言えば当然ですが、実際はなかなか余裕のある人員は配置できず、看護師さんの頑張りで乗り切っている医療機関が多いのが現実です。
このように人が不足している現場では、一人当たりの業務量は増え、新人教育も疎かになり、雑務にも謀殺されてしまいます。その反面、インシデント を起こせない!という常に張り詰めた緊張感の中で、どんどん疲弊し退職を考えてしまう、という負の流れになってしまうのです。
中堅看護師の退職が新人の退職を促してしまう?!
中堅看護師の退職者が増えると、経験が浅くまだまだ新人であったとしても、責任のあるポジションをやらざるを得なくなってしまいます。そのプレッシャーは計り知れないですよね。
自分で勉強をする時間もなくなってしまい、なんとかベテラン看護師と同程度の業務をこなしたとしても、給与は新人のまま。
結果、
まだまだこれから新しい道が見出せるかもしれない新人看護師でさえ、退職を考えてしまうのです。
またこの新人の時期にしっかりと教育を受けられない事は、将来のキャリアにも影響してしまいます。
進む働き方改革の裏で・・・
今年4月からスタートした看護師の働き方改革。岩手県のある病院では、働き方改革の影響で離職者が大勢でている、というニュースがありました。
その病院では働き方改革の目玉として「外来と病棟看護の一元化」を進めたそうです。担当がある程度固定されていた従来の働き方に比べ、看護師がローテーションでさまざまな持ち場を担うため、情報共有や柔軟なシフトを組みやすくするのが目的だったようです。
しかし、現場の看護師からすれば、経験の浅い業務まで幅広く担当する事になります。いくら看護師さんと言えども未経験の分野をいきなり担当させられるのは、精神的な負担が大きくなるのは当然ですよね。
そのため、サービス残業も増えてしまい、退職者が続出している、という悲しい結果になっています。
まとめ
いかがでしたか?
なかなか看護師が定着しない状況では、採用側が幅広い分野を担当できるゼネラリストな看護師を求めるのは、当然かもしれません。
しかし、ゼネラリストな看護師に突然なれる訳がありません。
それ以前に、看護師の働き方改革には、看護師の人手不足を解消しない事には難しい、という事が浮き彫りになった事例だと思います。
自分が今勤めている病院がどのような対策をしようとしているか、しっかりと確認しておく事が自分の今後のキャリアを決める上で必要になってくるかもしれません。
ぜひ参考にしてみてくださいね。